神戸商工会議所とアンカー神戸は、神戸での起業の促進とスタートアップの育成を支援するため、起業家や起業を志す学生などを対象に、地元の有力経営者が自身の体験談や大切にしている思いについて語り合う懇談会を開催している。
第4回目となる懇談会を10月6日に開催し、ITコンサルティングサービスやシステム開発などを手掛ける㈱神戸デジタル・ラボ代表取締役社長の永吉一郎氏が登壇した。永吉氏は「大震災と起業と僕」と題して講演。常に楽しみながら仕事と向き合い、多くの逆境を乗り越え、ビジネスを成長に導いた経営者人生を語った。
永吉氏は大学卒業後に、京セラ㈱光学機器事業部でカメラ設計や海外工場における生産立ち上げ、商品企画を担当。1991年、神戸で広告会社を経営する父親の急逝を受け、代表取締役に就任した。広告会社では、当時は珍しかったコンピューターを社内にいち早く導入し、業績を向上させた。そんな矢先に、阪神・淡路大震災が発生。これを機に、重要性を感じていたIT分野進出を決意し、神戸デジタル・ラボを立ち上げた。度重なるピンチにも遭遇するが、会社のビジョンに掲げた「神戸発、最新・最強のテクノロジープロバイダー」を胸に、ECサイト開発、ソフトウェア技術者の派遣業、セキュリティサービスなど、社会のニーズを先取りしたサービスを次々と始め、会社を成長させた経験を語った。
永吉氏は経営者以外の顔も持つ。学生時代にはプロドラマーを目指し、就職後も所属バンドがコンテストで地区優勝するほどの腕前だ。現在もバンド活動を継続する一方、(特非)生物多様性を守る会の事務局長を務め、生物多様性保全や外来種問題の解決に向けた活動も活発に展開している。
永吉氏は、持ち前の話術でユーモアを交えながら、数多くのエピソードを紹介。時に真剣に、時に笑いが起こる中、参加者は名経営者の含蓄ある言葉に大きく頷いていた。また、起業に関する悩みや、ターニングポイントでの決断の方法など多数の質問が寄せられ、活発な意見交換がなされた。神戸商工会議所では、今後も地元経営者とスタートアップの懇談会を継続開催していく。